剣道用語の基礎知識
剣道で使われる剣道用語について記します。随時、改変・更新していく予定です。
第1版 2014年7月26日
あ行
相打ち(あいうち)
試合や練習中に両者が有効となるようなダトツが同時に行われること。この場合、両者の打突とも有効にならない。
足絡み(あしがらみ)
相手に足をかける(足をからませる)ことで、試合では反則となる。
足さばき(あしさばき)
剣道における基本的な足の運び方(使い方)のこと。足さばきとは、相手を打突したり、相手の攻撃をかわしたりするための足の運び方です。日本剣道形では、歩み足、送り足、開き足が使われますが、次のことに気をつける必要があります。
- 足さばきは、すべてすり足で行い、踏み込み足は使わない。重心を上下させず、滑らかに行うことが大切です。
- 足の運びは、原則として前進するときは前足から、後退するときは後ろ足から動作を起こす。
- 足さばきは原則として一方の足に他方の足が伴います。特に打突時の後ろ足は残さず、前足に伴って引きつけることが大切です。
後打ち(あとうち)
相手の打突が有効となったにもかかわらず、そのあとから打突すること。
歩み足(あゆみあし)
ふだん歩くときと同じ足さばきで、前後にすばやく移動する場合などに適している。
一眼二足三胆四力(いちがんにそくさんたんしりき)
「眼」は目付(めつけ)、「足」は「足さばき」、「胆」は「精神力」、「力」は「実力(技術力)」のことで、剣道で重要視されるものを表している。
居つく(いつく)
動作中に瞬間的に休止し、相手の動きに反応できなくなった状態
一足一刀の間合い(いっそくいっとうのまあい)
一歩踏み込めば相手を打突でき、一歩ひけば相手の打突を外すことができる距離。剣道では、これが基本的な間合いとなる。
いなす
相手の打突を竹刀や足さばきで受け流し、相手の体勢をくずすこと。
裏(うら)
中段に構えたときの、自分の竹刀の右側のこと。「裏をとる」とは、相手の竹刀の裏(自分からみて相手の竹刀の左側)をとることを意味する。
打ち込み稽古(うちこみけいこ)
打ち込み稽古は、打ち込む側が元立ちの与える打突部位を捉えて打ち込んでいく中で打突の基本的な技術を体得する稽古法です。 →掛かり稽古との違いに注意!
遠山の目付(えんざんのめつけ)
相手と相対したときに、竹刀や打突部位だけを見つめたりせず、遠くにある山を望むように、相手の体全体を見ること。
応じ技(おうじわざ)
相手が仕掛けてきた技を「すりあげる」「打ち落とす」「返す」などして無効にし、その際に相手に生じた隙をねらう技。
送り足(おくりあし)
右足前、左足後ろの足位置で、進行方向の足から踏み出し、もう一方の足をひきつけるという動作をとる。剣道における基本的足さばきとされる。
起こり(おこり)
動作がはじまる瞬間のこと。出ばなの「端(はし)」にあたる。
表(おもて)
中段に構えたときの、自分の竹刀の左側のこと。「表をとる」とは、相手の竹刀の表(自分から見て相手の竹刀の右側)をとることを意味する。
か行
掛かり稽古(かかりげいこ)
元立ちを相手に、隙を見つけては次々とその部位を打ち込んでいく練習法。元立ちは良い打突を打たせ、悪い打突は返したり抜いたりして応じる。そうすることで正しい打突と体力、気力などが身についていく。掛かり稽古は、掛かる側が積極的に相手を攻め崩して打突の機会を作り、短時間のうちに気力・体力の限りを尽くして打ち込んでいく稽古法です。 → 打ち込み稽古との違いに注意!
かかり手(かかりて)
打ち込み稽古やかかり稽古などにおける「打突する側」の者。
掛け声(かけごえ)
掛け声には、1:自分の気力を充実させる、2:相手を威圧する、3:自分の力を集中して、より以上の勢いと力を発揮させる。4:気剣体の一致をはかり、打突を正確にさせるなどの効果がある。「大きな声」を出すことは、剣道上達において非常に大切なことです。なお、喉だけで声を張り上げるのではなく、お腹から発声することが大切です。
気合(きあい)
気合とは全身に気力を充満して、少しの油断もなければ邪念もない状態をいう。無声の気合、有声の気合をとわず、全身に充満した気力と心とが一致した状態であって相手にすきを与えないと同時に、相手にすきがあれば、直ちに打ち込んでいける状態。
基本の大切さ(きほんのたいせつさ)
剣道の基本は、家に例えると土台に相当する。つまり立派な家を建てるにはしっかりした土台が必要です。剣道でも上達するには基本が重要で、基本をしっかりと身に付けることで技術に無駄がなくなり、効率的で正確な技術が身に付くようになります。剣道では、昔から、「打ち込み3年」「基本に立ち返る」などと言われ、基本に重点が置かれています。
切り返し(きりかえし)
剣道の稽古の根幹をなすものといっても過言ではありません。正面打ち、前進しての左右面、後退しての左右面を繰り返します。切り返しでは次のことに気をつける必要があります。
- 立ち会いの間合いでは、姿勢、構え、竹刀の握り方などを正しくする。
- 初心の段階では、動作を大きく、正確に行う。
- 正面打ちは、一足一刀の間合いから正確に打つ。
- 肩の余分な力を抜いて、柔軟に左右均等に打つ。
- 連続左右面の打ちの角度を45度くらいにする。
- 正しい足さばきで行い、特に後退のときの引き足が歩み足にならないこと。
- 振りかぶったとき、左こぶしを頭の上まであげる。打ち下ろしたときは左こぶしが下がりすぎたり上がり過ぎたりしない。
- 左こぶしは、常に正中線上にある。
- 息のつなぎ方は、正面を打ち、相手に接近したところで息を吸い、左右面を打ち終わって間合いをとり、正面を打ったところで息をつぐ。
- 相手の竹刀のみを打ったり、空間を打ったりすることなく、伸び伸びと確実に左右面を打つ。
- 頭や腰、膝などで調子をとって体の上下動を大きくしない。
- 習熟するにつれて、旺盛な気力をもって息の続く限り一息で行い、体勢を崩さずに連続で左右面を打つようにする。
さ行
三殺法(さんさっぽう)
相手を封ずるための手だてとして、相手の剣、技、気の三つを封ずること。すなわち、
- 剣を殺すー相手の剣を押さえ、払うなどして剣の動きを殺す。
- 技を殺すー先手先手と攻め、相手に技を仕掛ける余裕を与えない。
- 気を殺すー気力で相手を圧倒し、相手が攻撃しようとする機先を制する。
残心(ざんしん)
「事後に心を残すこと」が本来の意味。日本の武道では主に、動作後でも緊張を持続する”心構え”のことを言う。すなわち、「残心とは、打突した後でも油断することなく、相手の反撃に対応できる身構えと気構えである」
また、「残心」という字は、「残身」と表記されることもあり、この場合、「残心」は”心”を残すこと、「残身」は”身(体)”を残すこととして区別される
試合稽古(しあいげいこ)
打ち込み稽古、掛かり稽古に次いで行われる試合を模した稽古法。試合稽古では、次のことに気をつける必要がある。
- 正しい姿勢と正しい構えで行う。
- 勝ちを誇示したり、不適切な態度を取らないようにする。
- 充実した気勢で、気構えを強くし、剣先を中心から外さないようにして攻め合う。
- 安易に左拳を正中線から外すような防御態勢はとらないようにする。
- 正しいつばぜり合いを行い、つばぜり合いからは積極的に技を出すか分かれるようにする。
- 勝敗の結果や試合内容を反省して、更なる修練(しゅうれん)の課題を確認する。
四戒(しかい)
相手に相対したときに生じる、驚き・恐れ・疑い・惑いの念のこと。これらが生じると心に隙ができ、打ち込まれてしまう。「四病(しびょう)」とも言う。
仕掛け技(しかけわざ)
相手が動作を起こすより先に相手の中心を攻めたり、しないを押さえたりして隙をつくらせ、その隙をねらって打突する技。
止心(ししん)
心がある一つのことに駐中してしまい、他のことに注意が働かなくなること。
鎬(しのぎ)
刀と刃の峯(みね)の中間にある、一段高くなっている部分の線のこと。竹刀の場合は、弦(つる)を上にした状態での側面部分の竹にあたる。
捨て身(すてみ)
相手の隙をみつけた瞬間などに、相手に自分の隙をさらけ出しながらも打ち込んでいくような攻撃動作のこと。
すり足(すりあし)
床をするように足を動かすこと。剣道ではすり足をベースにして足をさばく。
正眼の構え(せいがんのかまえ)
自分の竹刀の剣先を相手ののど元に向けて構えること。
正中線(せいちゅうせん)
頭から縦にまっすぐとおる中心線のこと。竹刀の剣先でこの正中線をとることにより、相手を制することが出来る。「中心」と表現されることが多い。
先(せん)
相手が打ってきたところを一瞬早く打つこと。
先々の先(せんせんのせん)
相手が打とうとする気を事前に察して打つこと。
蹲踞(そんきょ)
本来は踞る(うずくまる)、しゃがむという意味だが、剣道では両足を左右に開いて膝を曲げ、右足をやや前にしてつま先立ちになった姿勢のことを言う。
た行
体当たり(たいあたり)
踏み込みのときの勢いを下腹部に集中し、竹刀の柄(つか)と柄を交差させるようにして腰で相手にあたること。腕で押したり、頭から突っ込んだりしてはいけない。
打突部位(だとつぶい)
正確に打突できれば有効打突になる部分。
1:面(正面、左右面)、2:小手(右小手・左小手)、3:胴(右胴・左胴)、4:突き
打突の好機(だとつのこうき)
打突するのに良い機会のこと。打突の好機は次の通りです。1:相手の動作の起こり頭(でばな)、2:技(わざ)の尽きたところ(動作や技がおわったところ)、3:居ついたところ(心身の緊張が緩んだ瞬間、気持ちで圧倒されたとき)、4:引きはな(さがるところ)、5:受け止めたところ(受け止めた部位以外に隙が生じる)、6:息を深く吸うところ(息を吸うときには動作が止まる)
近間(ちかま)
一足一刀の間合いよりも近づいた状態の間合い。
継ぎ足(つぎあし)
右足を大きく前へ踏み込むときなどに行う。左足を右足の近くに引きつける足さばき。小手面を打つときに、左足が右足を追い越して前へでるのを見かけますが、このときは継ぎ足出なければなりません。
つばぜり合い(つばぜりあい)
接近した状態の両者の竹刀がやや右斜めに開き、つば付近を交えている状態。相手を攻撃したり、相手が攻撃してきたときに、間合いが近接して鍔(つば)と鍔が競り合った状態をいう。「正しいつば競り合いとは、自分のしないを少し右斜めにして手元を少し下げ、下腹に力を入れて自分の体の中心を確実に保つようにする。お互いの鍔と鍔が競り合う中で、手元の変化や体勢の崩れから打突の機会を作るようにする」
手の内(てのうち)
打突したり応じたりするときの両手の働き(握り方、力の入れ方、ゆるめ方など)のこと。
遠間(とおま)
一足一刀の間合いよりも離れた状態の間合い。
は行
刃筋(はすじ)
刀の刃(竹刀では弦の反対側)が通る軌道のこと。「刃筋が立つ」とは、刃がまっすぐに打突部位に向けて振られたことを意味する。
引きあげ(ひきあげ)
相手を打った後、十分な身構え・心構えがないままに下がること。
百練自得(ひゃくれんじとく)
「同じことを何度も繰り返し行えば、それは自然に身に付くものだ」という教え。
平打ち(ひらうち)
刀の刃にあたる部分(弦の反対側)ではなく、側面の部分で打つこと。有効打突にはならない。
開き足(ひらきあし)
自分の体を左右にさばくために使う足さばき。移動する側の足をややななめに出し、同時に体を開くようにして移動する。
ま行
間合い(まあい)
一般的には、相手と自分の距離間隔のことを言う。「距離の間合い」のほかにも、心の間合い、時間の間合いもある。
三つの先(みっつのせん)
一般的には、「先」「先々の先」「後の先」のことを言う。
元打ち(もとうち)
竹刀の物打ちではなく、竹刀のつばよりの部分で打つこと。有効打突にはならない。
元立ち(もとだち)
打ち込み稽古や掛かり稽古における「受ける側」の者。打ち込む側の者に対して指導的立場にある者が務めることが多い。子供同士の稽古においてお互いに元立ちをすることもあるが、この場合、元立ちは、ただ打たせるのではなく自身も稽古であると言う意識が必要である。
物打ち(ものうち)
竹刀の剣先から中結い(なかゆい)あたりの部分。
や行
有効打突(ゆうこうだとつ)
充実した気、正しい姿勢をもって、竹刀の物打ちで相手の打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものをいう。