基本稽古の留意点_注意すべき6項目と美しい姿勢を保つ7項目

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祝 要司(いわい ようじ)氏は、愛知県小牧市で大人を対象とした稽古会「日曜会」を主宰している剣道教士8段の先生です。ここでは、祝要司先生の著書「社会人のための考える剣道」から稽古の留意点を抜粋して紹介いたします。祝先生は、警察剣士が強いのは、基本稽古に十分な時間を費やしているからだと、ご自身の経験から述べています。
専門家は基本稽古をしているから強い
社会人になると「試合稽古・互角稽古」が中心の稽古内容になりがちですが、試合で確実に有効打突となるのは「気・剣・体一致」の技であり、これらは基本稽古を基礎として成り立っています。
稽古に取り組む姿勢
1.誰のために剣道をやっているのか
2.謙虚で教わる気持ちで取り組んでいるか
稽古前に、これらのことを振り返り、基本稽古を単なる準備運動と考えるのではなく、効果ある基本稽古に努める必要があります。常に忘れず、基本を大切にしたいものです。

稽古時に留意したい6項目

  1. 姿勢(悪癖の姿勢の是正)

  2. 呼吸(下丹田からの気の呼吸)

  3. 構え(気勢を込めた懸待一致の構え)

  4. 足さばき(多彩な応じ技を支える足さばき)

  5. 間合(遠間、一足一刀の間、近間の効用の熟知)

  6. 残心(気勢、体勢の身構え、心構え)

※ 注意すべき項目はたくさんありますが、重要なことは「理合」をいれることです。「稽古とは、いにしえを考える」ですから、先人の教えを考え、工夫するという意味を含めて取り組む必要があります。このことは剣道で言う「守・破・離」につながっていくものです。
剣道修行の「守・破・離」
「守」は、先生の教え、基本を身につける段階。「破」は、さらに自分の考え、工夫を加え、一皮向けた成長度合いをあらわすもの。そして、「離」へと進化を求めていきます。工夫をする上で大切なことは、工夫した結果を必ず検証することです。
 

美しい姿勢を作るために実践する7項目

  1. 蹲踞を充実させて先を取る

  2. 下丹田(下腹部)に力を入れて剣先を効かす

  3. うなじを垂直にして姿勢を正す

  4. 息を持続させ、縁を切らない

  5. 中攻めを意識して意味のある一本を打つ

  6. ひきつけ足はすばやく移動をスムーズにする

  7. 右半身も意識し、打突力をつける

 
構えてから「さあ、いくぞ」では遅く、相手と礼を交わす前から気持ちを整え、ゆっくりと息を吐きながら腰を落として蹲踞をします。立ち上がった瞬間から「さあ、行くぞ」という気持ちで対峙すれば、相手にとっても威圧感の受け方が違います。
対峙した際、臍下丹田に力をいれると、肩などの上半身が力まないのでリラックスでき、左拳が浮くことがありません。まっすぐに竹刀が相手に向かうので体の勢いがまっすぐに相手にぶつかっていきます。
うなじをスッとまっすぐにすると自然と腰はまっすぐとなり、打突時にも腰が早くついてきて足の引きつけも早く出来ます。うなじをまっすぐにのばすことで、目線・剣先がまっすぐになり、左手のおさまりも良くなります。
剣道の基本稽古の一つである切り返しでは、なるべく一息ですべてを打ち切ることがポイントです。吸った分だけ隙になりますので、呼吸の仕方を考えることが大切です。一本振るごとに呼吸をするのは楽ですが、なんとか吸わずに遣り切ろうとする行動こそが修行になるのでしょう。
中身のある(気持ちの入った)攻めを中攻めという。相手とやり取りする中で合気となり、なおかつ攻め勝った一本には、打突までの内容が凝縮しています。ぎりぎりの間合いとなっても動じず、攻めの姿勢を崩さないようにします。三殺法の教えを意識し、偶然の1本ではなく意図的に攻めた打突を出すことを心がけます。
左足は体を支える要です。左足に体重がしっかりと乗っていれば打突動作がスムーズになります。足幅の広さ(なるべく狭い方が良い)、ひかがみの伸び具合、かかとの高さに注意します。左足の引きつけを早くすることで、打突に鋭さが増します。右足で踏み込んだ瞬間に左足を引きつけるくらいの気持ちで望むといいでしょう。
剣道は左半身が重要ですが、右半身を上手に使うことで筋力に頼らず、スムーズな動きをすることが可能になります。意識としては、右足を大きく前に出し、踏み込むように心がけます。そうするとスムーズに左足がついてきます。前に出す意識を怠ると右膝を上げ過ぎて右足を前に出す途中で動きが止まってしまうので注意が必要です。
以上、体育とスポーツ出版社 祝要司著 「社会人のための考える剣道」を参考に作成

木刀による剣道基本稽古法

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最初に、YouTubeから「木刀による剣道基本技稽古法(公開演武)」の映像を紹介します。その後、具体的な手順を記載しました。日常の稽古の参考にしてください。


 


基本技

元立ち

掛かり手

基本1

正面

・剣先をやや右に開く

      一歩踏み出しながら大きく振りかぶり、「元立ち」の正面を打つ

      一歩後退して残心を示す

      更に一歩後退して「一足一刀の間合い」に復する

小手

・剣先をやや上に上げる

      一歩踏み出しながら振りかぶり「元立ち」の小手を打つ

      一歩後退して残心を示す

      更に一歩後退して「一足一刀の間合い」に復する

胴(右胴)

・手元を上げる

      大きく振りかぶりながら頭上で手を返し「元立ち」の小手を打つ

      一歩後退して残心を示す

      更に一歩後退して「一足一刀の間合い」に復する

突き

      剣先をやや右下に下げ一歩後退する

      一歩前進して元に復する

      腰を中心に体を進め「元立ち」の咽頭部(のど)を突く

      突いた後すぐ手元を戻す

      一歩後退して残心を示す

      さらに一歩後退して元に復する

基本2

小手→面

      剣先をやや上に上げる

      一歩後退しながら剣先をやや右に開いて正面を打たせる

      一歩前進して元に復する

      一歩踏み出しながら振りかぶって「元立ち」の小手を打つ

      「元立ち」が退くところを更に一歩踏み出して正面を打つ

      一歩後退して残心を示す

      さらに一歩後退して「一足一刀の間合」になる

      一歩後退して元に復する

基本3

払い面

(表)

 

      一歩踏み出しながら、表鎬を使って払い上げ、そのまま正面を打つ

      一歩後退して残心を示す

      更に一歩後退して元に復する

基本4

引き胴

(右胴)

・ 表鎬で応じる

      一歩踏み出しながら正面を打つ

双方やや前進し、鍔ぜり合いとなる

・ 押し返して手元を上げる

      「元立ち」の鍔元を押し下げる

      左足を退きながら振りかぶり右足をひきつけると同時に右胴を打つ

      一歩後退して残心を示す

双方一歩後退して元に復する

基本5

面抜き胴

      一歩踏み出しながら正面を打つ

      右足をやや右前に出しながら振りかぶり、右胴を打つ

双方正対しながら一歩後退し、「掛り手」は残心を示す。

双方左に移動し元に復する

基本6

小手すり上げ面(裏)

      一歩踏み出しながら小手を打つ

      すり上げられた小手うちの剣先は自然に体側から外れる

      左足から一歩後退しながら裏鎬ですりあげすかさず右足から一歩踏み出して正面を打つ

      打った後残心をを示す

       

双方左に移動し元に復する

基本7

出ばな小手

      やや右足を前に出しながら打ち込もうとして剣先を上げようとする

 

・ 右足を退き元に復する

      「起こり頭」を捉え、右足を一歩踏み出しながら小技ですばやく鋭く小手を打つ

      一歩後退して残心を示す

      一歩後退して元に復する

基本8

面かえし胴(右胴)

      一歩踏み出しながら正面を打つ

      右足をやや右斜め前に出しながら表鎬で迎えるように応じすかさず手を返して右斜め前に出ながら右胴を打つ

双方正対しながら一歩後退し「掛り手」は残心を示す

双方左に移動し元に復する

基本9

胴(右胴)

打ち落とし面

・ 一歩踏み出しながら右胴を打つ

 

      左足からやや左斜め後ろにさばくと同時に刃部の「物打」付近で斜め右下方に打ち落とし、すかさず右足を踏み出して正面を打つ

双方正対しながら一歩後退し、「掛り手」は残心を示す

双方右に移動し元に復する。

 

 

試合判定基準

 

 

基本技

判定基準

チェック欄

一本打ちの技

正面

左こぶしは正中線、左足のひきつけ

 

小手

目付け

 

胴(右胴)

刃筋、目付け、右こぶしの位置

 

突き

腰で突く、剣先は喉の高さ

 

二・三段の技

(連続技)

小手→面

後ろ足の引付を早く

 

払い技

払い面(表)

表鎬で、一拍子で打つ

 

引き技

引き胴(右胴)

正しい鍔ぜり合い、崩し

 

抜き技

面抜き胴

体さばき、目付け

 

すり上げ技

小手すり上げ面(裏)

払いにならない

 

出ばな技

出ばな小手

機会のとらえ方

 

返し技

面かえし胴(右胴)

手の返しと刃筋

 

打ち落とし技

胴(右胴)打ち落とし面

体さばき、刃で打ち落とす

 

剣道の袴(はかま)について

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袴(はかま)の折り目はどうして5つ?

 
袴の襞(ひだ)は左右で数が違うのをみておかしいな?なんておもったことはないでしょうか。左右3つずつ6つではないなんて中途半端な気がします。しかし、この5本の折り目には深い意味が込められているのです。
袴の5本の襞は、「五輪五常の道を諭したもの」とされています。
袴の折り目に込められた五倫五常の教えを心に留めて、日頃の稽古終了時に自身の稽古、日頃の行動を見直す心を持つことも大切なことでしょう。千里剣心会では、「お互いを尊重すること」を大切にし、「礼儀正しく」あることを稽古の心構えとして大切にしています。

こうした袴の折り目の意味をわかって剣道具を取り扱うことも、剣道上達につながる一歩かもしれません。

五倫五常とはどういうこと?

■ 五輪とは、儒教における5つの基本的な人間関係を規律する徳目を表し、
1:君臣の義 ・・・ 君臣(くんしん)は義を重んじお互いを思いやる。
2:父子の親 ・・・ 父子は親しみを持つ。
3:夫婦の別 ・・・ 夫婦は互いに役割を持つ。
4:長幼の序 ・・・ 兄弟は互いを愛し、敬って序(上下関係)を守る。
5:盟友のの信 ・・・盟友(固い約束を結んだ友)は信じあう。
の徳目です。
五常とは、人が常に守るべき5つの徳目のことです。
1:仁 ・・・己に克ち、他に対するいたわりのある心のこと
2:義 ・・・正しい行いを守ること
3:礼 ・・・礼儀、礼節を重んじること
4:智 ・・・物の道理を知り正しい判断を下すこと
5:信 ・・・いつわりのない忠実な誠の心
 
ちなみに、後ろの一本襞(ひだ)は、二心のない誠の道を示したものとも言われています。裏の折り目は、以下の二つの意味を持ちます。
1:忠 ・・・ 主君に尽くすまごころのこと
2:孝 ・・・ 親、兄弟を大切にする心のこと


 

袴のたたみ方

袴のたたみ方は、多くを語るよりも目で見て聞く方がわかりやすいでしょう。わかりやすくたたみ方を紹介してくれている参考サイトをいくつか紹介いたします。
袴のたたみ方を東月寒剣道部会さんが図によってわかりやすく紹介しています
http://www.geocities.jp/kendo_hts/club/adv_fold.html
 
以下は、YouTubeの動画から紹介。
chofukenren1さんの投稿動画
http://youtu.be/rGjXZC636Fg
霞ヶ関剣友会の動画

丸亀武道館一心会さんの動画です。

 
 

勝負の必勝法(竹松健 先生)

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八王子剣心館道場館長 竹松健 先生は、全日本高齢者剣道大会で優勝7回、準優勝4回の戦績を持ちます。重度の心筋梗塞を経てなお、剣道に取り組んでいます。3度の死を経験したという同氏だからこそ、下記の境地を実践できるのではないかと思います。わかっていても、実践するのが難しい課題です。
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構え_顔(宮本武蔵の五輪書)

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顔・・・宮本武蔵の「五輪書」の教え

  1. うつむかず、
  2. あをのかず、
  3. かたむかず、
  4. ひずまず目をみださず、
  5. ひたいにしわをよせず、
  6. まゆあいにしわをよせて、
  7. 目の玉うごかざるやうにして、
  8. またたきをせぬやうにおもひて、
  9. 目をすこしすくめるやうにして、うらやかに見ゆるかを、
  10. 鼻すじ直ぐにして、少しおとがいを出す心なり

備考:稽古や試合において疲れが出てくるとだんだん首が短くなります。注意したいものです。

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