日本剣道形について_内藤高治先生講話録より

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水戸藩出身の大日本武徳会” 大日本武徳会剣道範士、内藤高治(ないとうたかはる)先生は、高野佐三郎先生と共に剣道界に大きな影響力を持ち、「西の内藤、東の高野」と言われていたそうです。その内藤先生の講話録から日本剣道形について語った言葉を引用します。
 

元来、形の必要なる所以は、体を備え、気合い・呼吸・着眼・間合・足踏み・手の内・刃先・刃筋等の理を知覚せしむるのが根本である。
一通りの形だけでの練習では役に立たない。故に形を教授するには十分練習して教授しないと立案の趣旨と相違の点も生じて、教える人の動作により同じ形がいろいろに変化するから形の講習は易いようではなかなか至難である。
<中略>
我を去って講習し、この道の研究上有益なることを習う者に知覚せしむること肝要なり。

 


 
含蓄のある言葉です。
最後の言葉は、自らが教える立場に立ってより含蓄のある言葉に聞こえてきます。

基本稽古の留意点_注意すべき6項目と美しい姿勢を保つ7項目

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祝 要司(いわい ようじ)氏は、愛知県小牧市で大人を対象とした稽古会「日曜会」を主宰している剣道教士8段の先生です。ここでは、祝要司先生の著書「社会人のための考える剣道」から稽古の留意点を抜粋して紹介いたします。祝先生は、警察剣士が強いのは、基本稽古に十分な時間を費やしているからだと、ご自身の経験から述べています。
専門家は基本稽古をしているから強い
社会人になると「試合稽古・互角稽古」が中心の稽古内容になりがちですが、試合で確実に有効打突となるのは「気・剣・体一致」の技であり、これらは基本稽古を基礎として成り立っています。
稽古に取り組む姿勢
1.誰のために剣道をやっているのか
2.謙虚で教わる気持ちで取り組んでいるか
稽古前に、これらのことを振り返り、基本稽古を単なる準備運動と考えるのではなく、効果ある基本稽古に努める必要があります。常に忘れず、基本を大切にしたいものです。

稽古時に留意したい6項目

  1. 姿勢(悪癖の姿勢の是正)

  2. 呼吸(下丹田からの気の呼吸)

  3. 構え(気勢を込めた懸待一致の構え)

  4. 足さばき(多彩な応じ技を支える足さばき)

  5. 間合(遠間、一足一刀の間、近間の効用の熟知)

  6. 残心(気勢、体勢の身構え、心構え)

※ 注意すべき項目はたくさんありますが、重要なことは「理合」をいれることです。「稽古とは、いにしえを考える」ですから、先人の教えを考え、工夫するという意味を含めて取り組む必要があります。このことは剣道で言う「守・破・離」につながっていくものです。
剣道修行の「守・破・離」
「守」は、先生の教え、基本を身につける段階。「破」は、さらに自分の考え、工夫を加え、一皮向けた成長度合いをあらわすもの。そして、「離」へと進化を求めていきます。工夫をする上で大切なことは、工夫した結果を必ず検証することです。
 

美しい姿勢を作るために実践する7項目

  1. 蹲踞を充実させて先を取る

  2. 下丹田(下腹部)に力を入れて剣先を効かす

  3. うなじを垂直にして姿勢を正す

  4. 息を持続させ、縁を切らない

  5. 中攻めを意識して意味のある一本を打つ

  6. ひきつけ足はすばやく移動をスムーズにする

  7. 右半身も意識し、打突力をつける

 
構えてから「さあ、いくぞ」では遅く、相手と礼を交わす前から気持ちを整え、ゆっくりと息を吐きながら腰を落として蹲踞をします。立ち上がった瞬間から「さあ、行くぞ」という気持ちで対峙すれば、相手にとっても威圧感の受け方が違います。
対峙した際、臍下丹田に力をいれると、肩などの上半身が力まないのでリラックスでき、左拳が浮くことがありません。まっすぐに竹刀が相手に向かうので体の勢いがまっすぐに相手にぶつかっていきます。
うなじをスッとまっすぐにすると自然と腰はまっすぐとなり、打突時にも腰が早くついてきて足の引きつけも早く出来ます。うなじをまっすぐにのばすことで、目線・剣先がまっすぐになり、左手のおさまりも良くなります。
剣道の基本稽古の一つである切り返しでは、なるべく一息ですべてを打ち切ることがポイントです。吸った分だけ隙になりますので、呼吸の仕方を考えることが大切です。一本振るごとに呼吸をするのは楽ですが、なんとか吸わずに遣り切ろうとする行動こそが修行になるのでしょう。
中身のある(気持ちの入った)攻めを中攻めという。相手とやり取りする中で合気となり、なおかつ攻め勝った一本には、打突までの内容が凝縮しています。ぎりぎりの間合いとなっても動じず、攻めの姿勢を崩さないようにします。三殺法の教えを意識し、偶然の1本ではなく意図的に攻めた打突を出すことを心がけます。
左足は体を支える要です。左足に体重がしっかりと乗っていれば打突動作がスムーズになります。足幅の広さ(なるべく狭い方が良い)、ひかがみの伸び具合、かかとの高さに注意します。左足の引きつけを早くすることで、打突に鋭さが増します。右足で踏み込んだ瞬間に左足を引きつけるくらいの気持ちで望むといいでしょう。
剣道は左半身が重要ですが、右半身を上手に使うことで筋力に頼らず、スムーズな動きをすることが可能になります。意識としては、右足を大きく前に出し、踏み込むように心がけます。そうするとスムーズに左足がついてきます。前に出す意識を怠ると右膝を上げ過ぎて右足を前に出す途中で動きが止まってしまうので注意が必要です。
以上、体育とスポーツ出版社 祝要司著 「社会人のための考える剣道」を参考に作成

[動画] 第12回全日本選抜剣道八段優勝大会

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第12回 全日本選抜剣道八段優勝大会

12th All Japan KENDO 8-DAN holder’s Championship

Kendo Worldが提供するYouTube映像を紹介します。セミファイナルでの東先生と大澤先生の面返し胴の奪い合いがすばらしいです。第12回全日本選抜剣道八段優勝大会のホームページはこちら
 
セミファイナル


ファイナル

木刀による剣道基本稽古法

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最初に、YouTubeから「木刀による剣道基本技稽古法(公開演武)」の映像を紹介します。その後、具体的な手順を記載しました。日常の稽古の参考にしてください。


 


基本技

元立ち

掛かり手

基本1

正面

・剣先をやや右に開く

      一歩踏み出しながら大きく振りかぶり、「元立ち」の正面を打つ

      一歩後退して残心を示す

      更に一歩後退して「一足一刀の間合い」に復する

小手

・剣先をやや上に上げる

      一歩踏み出しながら振りかぶり「元立ち」の小手を打つ

      一歩後退して残心を示す

      更に一歩後退して「一足一刀の間合い」に復する

胴(右胴)

・手元を上げる

      大きく振りかぶりながら頭上で手を返し「元立ち」の小手を打つ

      一歩後退して残心を示す

      更に一歩後退して「一足一刀の間合い」に復する

突き

      剣先をやや右下に下げ一歩後退する

      一歩前進して元に復する

      腰を中心に体を進め「元立ち」の咽頭部(のど)を突く

      突いた後すぐ手元を戻す

      一歩後退して残心を示す

      さらに一歩後退して元に復する

基本2

小手→面

      剣先をやや上に上げる

      一歩後退しながら剣先をやや右に開いて正面を打たせる

      一歩前進して元に復する

      一歩踏み出しながら振りかぶって「元立ち」の小手を打つ

      「元立ち」が退くところを更に一歩踏み出して正面を打つ

      一歩後退して残心を示す

      さらに一歩後退して「一足一刀の間合」になる

      一歩後退して元に復する

基本3

払い面

(表)

 

      一歩踏み出しながら、表鎬を使って払い上げ、そのまま正面を打つ

      一歩後退して残心を示す

      更に一歩後退して元に復する

基本4

引き胴

(右胴)

・ 表鎬で応じる

      一歩踏み出しながら正面を打つ

双方やや前進し、鍔ぜり合いとなる

・ 押し返して手元を上げる

      「元立ち」の鍔元を押し下げる

      左足を退きながら振りかぶり右足をひきつけると同時に右胴を打つ

      一歩後退して残心を示す

双方一歩後退して元に復する

基本5

面抜き胴

      一歩踏み出しながら正面を打つ

      右足をやや右前に出しながら振りかぶり、右胴を打つ

双方正対しながら一歩後退し、「掛り手」は残心を示す。

双方左に移動し元に復する

基本6

小手すり上げ面(裏)

      一歩踏み出しながら小手を打つ

      すり上げられた小手うちの剣先は自然に体側から外れる

      左足から一歩後退しながら裏鎬ですりあげすかさず右足から一歩踏み出して正面を打つ

      打った後残心をを示す

       

双方左に移動し元に復する

基本7

出ばな小手

      やや右足を前に出しながら打ち込もうとして剣先を上げようとする

 

・ 右足を退き元に復する

      「起こり頭」を捉え、右足を一歩踏み出しながら小技ですばやく鋭く小手を打つ

      一歩後退して残心を示す

      一歩後退して元に復する

基本8

面かえし胴(右胴)

      一歩踏み出しながら正面を打つ

      右足をやや右斜め前に出しながら表鎬で迎えるように応じすかさず手を返して右斜め前に出ながら右胴を打つ

双方正対しながら一歩後退し「掛り手」は残心を示す

双方左に移動し元に復する

基本9

胴(右胴)

打ち落とし面

・ 一歩踏み出しながら右胴を打つ

 

      左足からやや左斜め後ろにさばくと同時に刃部の「物打」付近で斜め右下方に打ち落とし、すかさず右足を踏み出して正面を打つ

双方正対しながら一歩後退し、「掛り手」は残心を示す

双方右に移動し元に復する。

 

 

試合判定基準

 

 

基本技

判定基準

チェック欄

一本打ちの技

正面

左こぶしは正中線、左足のひきつけ

 

小手

目付け

 

胴(右胴)

刃筋、目付け、右こぶしの位置

 

突き

腰で突く、剣先は喉の高さ

 

二・三段の技

(連続技)

小手→面

後ろ足の引付を早く

 

払い技

払い面(表)

表鎬で、一拍子で打つ

 

引き技

引き胴(右胴)

正しい鍔ぜり合い、崩し

 

抜き技

面抜き胴

体さばき、目付け

 

すり上げ技

小手すり上げ面(裏)

払いにならない

 

出ばな技

出ばな小手

機会のとらえ方

 

返し技

面かえし胴(右胴)

手の返しと刃筋

 

打ち落とし技

胴(右胴)打ち落とし面

体さばき、刃で打ち落とす

 

[動画] 日本剣道形の小太刀二本目

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■日本剣道形の小太刀2本目は、面受け流し面です。小太刀1本目と異なり、右鎬で受け流します。
 
打太刀:下段(太刀)
仕太刀:中断半身の構え(小太刀、剣先はやや低め)
 

 

留意点・理合い

  •  打太刀が下段をとった場合、仕太刀は剣先を打ち太刀の胸部、刃は下へ向け、左肩を少し引いた状態とする。
  • 対峙したときの気争い
  • 小太刀がふところに入ってしまうと打ち太刀は対応できない状態になってしまうので、そうはさせまいと思って剣先をあげていく。→1回目の入り身
  • 耐えきれず(懐に入られては行けないと思い)、太刀を脇にとる。→2回目の入り身
  • 仕太刀はスーと前へ出て、剣先を胸部につける。

 

仕太刀

打太刀

・中段半身の構え(剣先はやや低め) ・下段

お互いに右足から進む

・打ち太刀が中断になろうとするタイミングを捉え、仕太刀はこれを押さえて入り身になろうとする。 ・身を守ろうとして下段から中段になろうとする。
・押さえられまいとして、右足を後ろに引いて脇構えに開く
・すかさず入り身になって攻め込む
・      左足を左斜め前に・      右足をその後ろに進めて体を左に開くと同時に右手を頭上に上げは先を後ろにし、右鎬で受け流す。 ・やむをえず脇構えから変化して左上段に振りかぶり、右足を踏み出すと同時に「ヤー」のかけ声で仕太刀の正面を打つ。
・「トー」のかけ声で正面を打ち、打ち太刀の二の腕を押さえ、
・右こぶしを右腰にとり、刃先を右斜め下に向け剣先をのどにつけて残心を示す。
・右足から相中段となる。 ・左足から相中段となる。

双方同時に相中段となった後、刀を開いて右足から下がる。

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