千里剣心会では、稽古の初めに「剣道の理念」および「千里剣心会の稽古の心構え」を唱和しています。これに合わせて、時間の許すときは講話を組み入れる取り組みを行っております。

9月の言葉は「文武両道」です。前田先生が子供たちに伝えたい大切なこととして次の二つの紹介してくださいました。

 ・一生懸命にやることの大切さ

 ・勉強(文化芸術)と武道(運動)の相乗効果によって素晴らしい人(幅の広い人)になれる

前田先生は、「皆もちろん一生懸命頑張っているとは思いますが、それ以外のことも頑張るとさらに剣道が強くなることを伝えたい」という思いから文武両道という言葉を選んだそうです。実際、運動すると記憶力が良くなることも知られており、身体を動かすことと頭を使うことは相互に深く結びついていることが多くの科学的な研究からも明らかにされています1)2)3)。

以下、文武両道(ぶんぶりょうどう)についてみていきましょう。

文武両道とは何か?

文武両道とは、文(頭を使うこと)と武(体を使うこと)の両方を大切にし、バランスよく取り組むことです。文は勉強や知識の獲得、好奇心の発展を指し、武は体力の鍛錬、礼儀や精神性の育成を指します。この両方を一生懸命に実践することで、素晴らしい人間に成長する機会が広がります。

文事によって戦略を立て、その戦略に沿って武事を実践することが大切です4)。

文(頭を使うこと:文化的なこと:一般的には勉強)

文事、つまり頭を使うことは、勉強だけでなく、好きなことや興味を持つことも含みます。

  1. 戦略の重要性: 勉強を通じて戦略を学びます。問題を解決し、新しいアイデアを考える力は、剣道やスポーツの戦術立てにも役立ちます。
  2. 知識の獲得: 勉強をすることで、様々な分野について学び、自分の視野を広げることができます。知識は力です。
  3. 好奇心の育成: 好奇心を持ち、新しいことを発見しましょう。新しい趣味や興味を持つことで、人生がより豊かになります。

武(体を使うこと:運動:ここでは剣道)

武事、つまり体を使うことは、剣道やスポーツを通じて体力と精神力を鍛える活動を指します。

  1. 健康維持: 運動は体を健康に保つのに役立ちます。強い体は日常生活でも活躍します。
  2. 礼儀と協力: 剣道やスポーツでは礼儀正しい態度と協力が重要です。相手を尊重し、チームで協力することを学びます。
  3. 精神力の養成: 困難な状況に立ち向かうための精神力を養います。挫折から学び、成長します。

文武両道の体現例

文武両道の概念を具体的な例で示しましょう。

  1. 修文練武(高校の剣道部の標語): 私の高校の剣道部でも、文武両道と同じくらい大切な概念として「修文練武」という言葉を標語に掲げていました。東京都の公立高校では一番剣道が強い高校であり、朝夕方夜と毎日3回、6時間の稽古をしていたが、生徒たちは皆浪人せず早慶や国立大医学部などに進学しました(前田先生経験談)。
  2. 慶應高校野球部: 甲子園優勝を果たした慶應高校野球部は、毎日2時間しか練習していないながら、勉強も一生懸命に行っています。文武両道を実践した結果、優勝に輝いた例です。
  3. 宮本武蔵: 剣術の達人でありながら、優れた画家でもありました。彼は「文武両道」の理念を実践した典型的な例です。剣術で数々の戦いに勝利した彼は、同時に絵画においても卓越した才能を発揮しました。このことから、文(芸術や知識)と武(戦闘や体力)を両立させることが、一つの分野での成功だけでなく、多くの分野での成果を生み出すことができることを示しています。
  4. 戦国時代の武士: 戦国時代の武士たちは、武道だけでなく、俳句や茶道など文化的な活動にも親しんでいました。これらの活動が彼らの剣術の強さに寄与しました。
  5. ピアノ:剣道を始めたおかげで力が強くなり、これまで出せなかった音を出せるようになった(前田先生経験談)

自分の好きなことも大切に

子供たちは、自分の好きなことや興味を持つことが大切であるという事を知ってほしいと思います。自分の好きなことに取り組むことで、文と武の両方にプラスになることがあります。例えば、ピアノを習っている子供は、その経験が剣道や他の活動にもプラスになることがあります。自分の好きなことを楽しんで、頑張りましょう。

まとめ

文武両道は、頭を使うことと体を使うことをバランスよく取り組むことです。これにより、戦略力、知識、体力、礼儀正しい態度、精神力などが養われ、素晴らしい人に成長する可能性が広がります。自分の好きなことにも一生懸命取り組んで、文武両道を実践しましょう。そして、成長と成功を楽しんでください!

参考

1)運動すると記憶力がよくなる!? そのメカニズムが研究から明らかに       https://wired.jp/2020/10/10/sports-motor-learning/

2)文部科学省がおこなう全国都道府県学力・学習状況調査で上位に入る都道府県は運動能力調査でも上位に入る傾向。偏差値が高い高校へ入学する子は中学生の頃運動部に入部していた確率が高い。https://jr-soccer.jp/2018/11/11/post103770/2/

3)軽度から激しい運動を120秒間行うだけでも「学習記憶、計画立案および問題解決の能力、集中力、言葉の滑らかさ」が向上する https://www.cnn.co.jp/fringe/35159495.html

4)剣道中毒 https://xn--fiq85he02a7l7a.com/archives/2387.html