千里剣心会では、稽古の初めに「剣道の理念」および「千里剣心会の稽古の心構え」を唱和しています。これに合わせて、時間の許すときは講話を組み入れる取り組みを行っております。

6月の言葉は「うんどんこん」です。川又先生が剣道が上達するために大切なこととして紹介してくださいました。

剣道上達の秘訣は、「うんどんこん」だと言われます。この言葉は、戦後、京都大学剣道部の師範を務めた西善延範士が、面手ぬぐい等に記していた人生訓であり、指導理念だそうです。成功に必要な3つの要素としても広く知られている言葉でもあります。

では、うんどんこんとは、どいう言う意味でしょうか?

うんは!運勢

どんは!鈍感

こんは!根気

運は、運がいいという事。根は根気があるという事。この二つが成功に必要な要因と言われると分かるようにも思いますが、鈍感がいい?って、何か不思議な気がしませんか?

以下、うんどんこんについて、解釈を考えてみたいと思います。

「運鈍根(うんどんこん)」 成功するには、運が強いこと、根気があること、ねばり強いことの三つが必要であるという教え。

漢字ペディアより)

運について

運が良いとか悪いとか言いますが、運とは仏教でいう縁の事です。剣道が上達するためには、良い師に巡り合うことが大切です。人との出会い、時代の到来、環境などいろいろな縁がありますが、どんなに頑張ってもこの縁がなければなかなか大成することは難しいかもしれません。そして追いかけてもだめ、追いかけなければやはりだめという厄介なものなのです。それが「縁(運)」というものです。

千里剣心会で剣道を始めた「縁(運)」を大切に、

仲間や先生方との縁を大切にしてほしいと思います。

また、今、稽古を出来ているという事は、とても大切なことです。今修行が出来る人は、その縁(運)を大事にしなければなりません。大事にするということは気を抜かないで今に集中することです。これにより、縁(運)が舞い込んでくるのです。運は準備をしている人のところにしか訪れません

今を大切にするということも、運をつかむうえで意識したいものです。

鈍について

鈍?と思われる方も多いと思います。

一般的に「鈍感」という言葉は、「気が利かない」「空気が読めない」といったネガティブなイメージで捉えられます。ではなぜ、成功要因に「鈍」が必要なのでしょうか?

私がこの言葉に出会ったのは、生徒指導において次のような悩みを口にした時のことでした。

とても頭が良くて理解力もセンスもあり、剣道に限らず何をやっても上手な生徒がいる。ところが、こういう生徒に限って、さあ、ココから成長するぞッという時に別の習い事が忙しいと言って稽古に来なくなってしまったり、小手先のテクニックに走ってしまったりする・・・

この悩みに対して、教えてもらった言葉がうんどんこんでした。教えてくださった剣道八段の先生の解釈は以下のようなものでした。『剣道が上達するには少し不器用なくらいの方がいい。上手くいかないから一生懸命考える。鈍いというと悪いイメージがあるかもしれないが、何でもできてしまうと考えないままでどこかで成長が止まってしまう。それよりも、鈍いくらいの方が上手くなろうと考えるからよいのだ』と。

なるほど、器用貧乏という言葉があるように、何でもすぐにできてしまうよりも、少し頑張れば出来るくらいの方が良いのかもしれません。そして、一生懸命に考えること。これ、すごく大切な成長要因であろうと思います。

ビジネスの世界に目を転じると、実業家の古川市兵衛氏は、運鈍根を以下のように表現しています。

『私はいつも「運・鈍・根」を唱え続けてきた。
運は鈍でなければつかめない。利口ぶってチョコマカすると
運は逃げてしまう。 鈍を守るには根がなければならぬ。』

古河市兵衛(実業家)

この言葉の解釈の中で、鈍は「利口ぶらないこと」というように解釈できます。禅の修行の中でも運鈍根という言葉は大切に扱われており、その教えの中で、鈍というのは自分をごまかさずに真正面から立ち向かうことだとされています。剣道でも師の教えを素直に聞き、自分をごまかさずに真正面から課題に向き合うことは大切な心構えでしょう。

また、ビジネス書などでは、「鈍感力」とはストレス要因を正面から受け止めるのではなく、上手に受け流すスキルのことだと説明しています。 スキルとしての鈍感力は、ストレス要因を「あえて気にしない」「意識して忘れる」ことでコントロールするものです。

一方、私に運鈍根を教えてくださった八段の先生は、別の機会に、次のようなことも言っておられました。「鈍」は大切だけれども、自分のことを「鈍くさい」などと思っては絶対にダメだ。自分は出来ると思わなければ、出来るものも出来ないのだから・・・。

また、「鈍」という言葉には別の解釈も含まれます。剣道の上達は一日にしてなりません。一気に成長するものではなく、鈍いくらい少しずつ成長していくものです。

このように見てくると、「鈍」という言葉、深いですね・・・

根について

物事を成功するためには、運(運を掴むこと)鈍(鈍いと思われるくらいの粘り強さ)と根(根気よく続ける)この三つが必要である。「根」とは根気の事である。哲学者の和辻哲郎氏は次のような言葉を残しています。

成長を欲するものは、まず根を確かにおろさなくてはならぬ

和辻哲郎(哲学者)

なるほど、成功するために必要な要素としての「根」がイメージできる言葉です。

何をやっても思うようにならない時、上にのびられない時に根は育つんだから

相田みつを

あいだみつおさんの言葉も同じようなことを言っています。剣道を続けている生徒の中にはなかなか自分が上手にならず、自分には才能がないのではないか?と悩んでしまう子供もいます。しかし、成長というのは、一気に訪れるものではありません。根気よく稽古を続けることで少しずつ成長していくものなのです。

ビジネスに目を転じると、ひと時流行ったGRITという言葉が想起されます。成功した人たちには共通して「やり抜く力(GRIT)」があるというものです。「根性論は強制」「GRITは自発的」という点が最大の違いです。

剣道の稽古は単純単調です。小学生の初心者から八段の高段者まで、行う稽古はほぼ同じです。同じ稽古をひたすら繰り返すわけですが、その稽古に求める質は当然、初心者と高段者では異なってきます。しかし、いずれにしても、タイミングをみて 細かいことは気にせずに 自分の求める課題を解決するために、ひたすらやり続けることが大切です。

運鈍根 まとめ

「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である」これは剣道の理念に掲げられた言葉です。「運鈍根」とは、まさに満足な人生を送るための人間形成に必要な三要素なのかもしれません。

①運は徳のある人のところにやってくる。徳を積め → 幸運に恵まれる

②流行に流されるな。不易の部分を持て → 才走らずこつこつ努めること

③根気よく続けよ。続けられるものを選べ → 根気よいこと

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