[先人の教え] 剣心一如

No Comments

千里剣心会では、稽古の初めに「剣道の理念」および「千里剣心会の稽古の心構え」を唱和しています。これに合わせて、時間の許すときは講話を組み入れる取り組みを行っております。

10月の言葉は「剣心一如(けんしんいちにょ)」です。熊代先生が子供たちに伝えたい大切なこととして紹介してくれました。この言葉は、木村拓哉主演のテレビドラマ『風間公親-教場0-』において、指導教官役の木村拓哉が生徒たちに語った言葉だそうです。

『風間公親-教場0-』木村拓哉だからこそ演じられた風間公親 指導官室に飾られた書が示す、納得の人物像 Yahoo News 2023/6/20

剣道場で子供たちに伝えた「剣心一如」という言葉は、正しい剣の修行をすれば、正しい心を磨く結果となるという意味です。秋の剣道大会を前に、子供たちは試合の稽古をしていますが、「勝つためには正しい心が必要である」という風間の言葉をそのまま子供たちに送りました。

試合になると、勝ちたい!負けたくない!という心が働き、ついつい、普段の練習では気を付けていることが出来なくなってしまいがちです。では、「正しい剣の修行」とは何なのでしょうか?

「正しい心を磨く」という時の正しい心とは何なのでしょうか?

ドラマにおいて、「何が正しくて、何が正しくないのか」。風間は剣道を通して自分の正しさを探し続けてきました。

正しい剣の修行を探すこともまた、剣の道(剣道)なのだろうと思われます。子供たちには、これから剣道の稽古を続けていく中で試行錯誤しながら、正しい剣の道を見つけていってもらいたいと思います。

参考までに、一つの考え方を示しておきましょう。

剣道は、まっすぐに振りかぶってまっすぐに振り下ろせば、絶対に負けないし、勝てるものだと思います。非常にシンプルなことです。

ところが、この真っすぐに振りかぶることが難しい。また、まっすぐに振り下ろすことも難しいものです。剣道において相手を目の前にして構えた時、まっすぐに構えることもまた難しいことです。中心を奪い合い、自分有利のまっすぐの態勢を作ることが勝利への近道ですが、これがまた難しいものです。

驚懼疑惑(きょうくぎわく)という言葉が示すように、相手と対峙したとき、ただでさえ難しい「正しく構え、正しく振り上げ、正しく振り下ろす」という事が出来なくなってしまいます。これが、心と剣が一つにつながっているという「剣心一如」の教えにつながるものなのではないでしょうか。

驚懼疑惑(きょうくぎわく):相手対峙したときにおこる心の動揺や心の動揺抑えきれない状態をあらわしたことば。驚いたり、擢(恐)れたり、疑ったり、惑ったりする心の状態。四戒、四病ともいい、これをいかに制御するかが重要であるという教え

剣道用語辞典

日頃の稽古において、どのような状況にあっても、平常心を保ち普段の稽古通りのことを常に出来る強い心を練ることが、一つの正しい稽古の在り方なのだろうと思います。打ちたい・負けたくないと、無用な動きをするのではなく、しっかり構え、しっかり攻めて、しっかり相手を観て、ここぞのタイミングで恐れを克服して捨てきる打ちを出し切ること。そんな剣道を目指していきたいと思います。

言うは易く行うは難し

です。

あわせて、心身一如という言葉も知っておきましょう

[先人の教え] 身心一如

No Comments

10月の言葉として、「剣心一如(けんしんいちにょ)」という言葉を紹介しました。これに付随して、似た言葉に、「身心一如(しんしんいちにょ)」「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があります。合わせて紹介しておきましょう。

心と体は一つ、心と体は繋がっているといったニュアンスの言葉です。つまり、「心を変えることで身体が変わり、身体を変えることで心が変わる」ということです。

剣心一如とあわせて、心身一如という言葉も知っておくといいでしょう。

「剣心一如」と「心身一如」を重ね合わせると、心と身体と剣は一緒ですよ!という教えにつながることになります。その教えが「心気力の一致」です。

心気力の一致(しんきりょくのいっち)=気剣体の一致(きけんたいのいっち)

心気力の一致とは、主に攻防動作の教えであり、この心気力の三者が一体となって働くことにより、迫力ある有効打突が生じるということです。この言葉を言い換えると「気剣体の一致」となります。

[先人の教え]文武両道

No Comments

千里剣心会では、稽古の初めに「剣道の理念」および「千里剣心会の稽古の心構え」を唱和しています。これに合わせて、時間の許すときは講話を組み入れる取り組みを行っております。

9月の言葉は「文武両道」です。前田先生が子供たちに伝えたい大切なこととして次の二つの紹介してくださいました。

 ・一生懸命にやることの大切さ

 ・勉強(文化芸術)と武道(運動)の相乗効果によって素晴らしい人(幅の広い人)になれる

前田先生は、「皆もちろん一生懸命頑張っているとは思いますが、それ以外のことも頑張るとさらに剣道が強くなることを伝えたい」という思いから文武両道という言葉を選んだそうです。実際、運動すると記憶力が良くなることも知られており、身体を動かすことと頭を使うことは相互に深く結びついていることが多くの科学的な研究からも明らかにされています1)2)3)。

以下、文武両道(ぶんぶりょうどう)についてみていきましょう。

文武両道とは何か?

文武両道とは、文(頭を使うこと)と武(体を使うこと)の両方を大切にし、バランスよく取り組むことです。文は勉強や知識の獲得、好奇心の発展を指し、武は体力の鍛錬、礼儀や精神性の育成を指します。この両方を一生懸命に実践することで、素晴らしい人間に成長する機会が広がります。

文事によって戦略を立て、その戦略に沿って武事を実践することが大切です4)。

文(頭を使うこと:文化的なこと:一般的には勉強)

文事、つまり頭を使うことは、勉強だけでなく、好きなことや興味を持つことも含みます。

  1. 戦略の重要性: 勉強を通じて戦略を学びます。問題を解決し、新しいアイデアを考える力は、剣道やスポーツの戦術立てにも役立ちます。
  2. 知識の獲得: 勉強をすることで、様々な分野について学び、自分の視野を広げることができます。知識は力です。
  3. 好奇心の育成: 好奇心を持ち、新しいことを発見しましょう。新しい趣味や興味を持つことで、人生がより豊かになります。

武(体を使うこと:運動:ここでは剣道)

武事、つまり体を使うことは、剣道やスポーツを通じて体力と精神力を鍛える活動を指します。

  1. 健康維持: 運動は体を健康に保つのに役立ちます。強い体は日常生活でも活躍します。
  2. 礼儀と協力: 剣道やスポーツでは礼儀正しい態度と協力が重要です。相手を尊重し、チームで協力することを学びます。
  3. 精神力の養成: 困難な状況に立ち向かうための精神力を養います。挫折から学び、成長します。

文武両道の体現例

文武両道の概念を具体的な例で示しましょう。

  1. 修文練武(高校の剣道部の標語): 私の高校の剣道部でも、文武両道と同じくらい大切な概念として「修文練武」という言葉を標語に掲げていました。東京都の公立高校では一番剣道が強い高校であり、朝夕方夜と毎日3回、6時間の稽古をしていたが、生徒たちは皆浪人せず早慶や国立大医学部などに進学しました(前田先生経験談)。
  2. 慶應高校野球部: 甲子園優勝を果たした慶應高校野球部は、毎日2時間しか練習していないながら、勉強も一生懸命に行っています。文武両道を実践した結果、優勝に輝いた例です。
  3. 宮本武蔵: 剣術の達人でありながら、優れた画家でもありました。彼は「文武両道」の理念を実践した典型的な例です。剣術で数々の戦いに勝利した彼は、同時に絵画においても卓越した才能を発揮しました。このことから、文(芸術や知識)と武(戦闘や体力)を両立させることが、一つの分野での成功だけでなく、多くの分野での成果を生み出すことができることを示しています。
  4. 戦国時代の武士: 戦国時代の武士たちは、武道だけでなく、俳句や茶道など文化的な活動にも親しんでいました。これらの活動が彼らの剣術の強さに寄与しました。
  5. ピアノ:剣道を始めたおかげで力が強くなり、これまで出せなかった音を出せるようになった(前田先生経験談)

自分の好きなことも大切に

子供たちは、自分の好きなことや興味を持つことが大切であるという事を知ってほしいと思います。自分の好きなことに取り組むことで、文と武の両方にプラスになることがあります。例えば、ピアノを習っている子供は、その経験が剣道や他の活動にもプラスになることがあります。自分の好きなことを楽しんで、頑張りましょう。

まとめ

文武両道は、頭を使うことと体を使うことをバランスよく取り組むことです。これにより、戦略力、知識、体力、礼儀正しい態度、精神力などが養われ、素晴らしい人に成長する可能性が広がります。自分の好きなことにも一生懸命取り組んで、文武両道を実践しましょう。そして、成長と成功を楽しんでください!

参考

1)運動すると記憶力がよくなる!? そのメカニズムが研究から明らかに       https://wired.jp/2020/10/10/sports-motor-learning/

2)文部科学省がおこなう全国都道府県学力・学習状況調査で上位に入る都道府県は運動能力調査でも上位に入る傾向。偏差値が高い高校へ入学する子は中学生の頃運動部に入部していた確率が高い。https://jr-soccer.jp/2018/11/11/post103770/2/

3)軽度から激しい運動を120秒間行うだけでも「学習記憶、計画立案および問題解決の能力、集中力、言葉の滑らかさ」が向上する https://www.cnn.co.jp/fringe/35159495.html

4)剣道中毒 https://xn--fiq85he02a7l7a.com/archives/2387.html

[先人の教え] 真善美(しんぜんび)

No Comments

千里剣心会では、稽古の初めに「剣道の理念」および「千里剣心会の稽古の心構え」を唱和しています。これに合わせて、時間の許すときは講話を組み入れる取り組みを行っております。

8月の言葉は「しんぜんび」です。中上先生が剣道が上達するために大切なこととして紹介してくださいました。

剣道を学ぶ上で大切なことは、先生の教えを素直に聞いて受け入れ、咀嚼し、自分のものにすべく鍛錬することだと考えています。それは剣道だけでなく、学生として様々なことを学ぶ上でとても大切な心構えだと思っています。中上先生は、この言葉を胴の内側に記し、座右の銘としているとのことです。

堀籠敬蔵先生著「剣道の法則」にも紹介されていう言葉です。

真善美の解説

「真・善・美」は、もともと古代ヨーロッパの哲学者が語った言葉1)で、人間が生きる上で最高の価値観を表しています。

「真(しん)」=「真剣な心」
何かを学ぶ上で土台になる心構え・姿勢です。
剣道でも、常に真剣に学び続けることで、技術の向上や心の成長につながるでしょう。

「善(ぜん)」=「素直な心」
先生や先輩など多くの人の言葉を素直に聞いて、それを自分の中でよく考えて稽古や勉強することが大切です。たとえその言葉が自分の考えとは違っていたとしても、一度受け入れて、本当に違うのか考えてみましょう。そこにはきっと成長につながるヒントが隠れています。
また素直な姿勢を見せることで、指導する先生や先輩はどんどんアドバイスをしてくれるようになります。それらを自分のものにしていくことで、大きく成長できるでしょう。

「美(び)」=「美しさ」
見ている人に「美しいな」と思われることです。稽古や試合をしている姿だけではなく、礼儀作法や相手を尊敬する心など、剣道にはたくさんの「美しさ」があります。初めは真似するだけで精一杯だと思いますが、何度も繰り返し練習や稽古をしていくことでやがて自分の一部になり、自然と「美しさ」を醸し出すことができるようになります。

このように、「真・善・美」を意識して稽古することで、力強さと美しさを併せ持つ素晴らしい剣道が身につくでしょう。

またこの価値観は剣道だけでなく、日常生活においても大切です。
真剣で素直な心で接し、見る人に感動を与えるような美しさや美しい心を持つことで、相手と素敵な人間関係を築くことができ、自分自身が幸せを感じられるだけでなく、周囲の人にも幸せや喜びをもたらすことができます。

「真・善・美」を大切にし、心の成長を重ねて、剣道の上達だけでなく、幸せで豊かな人生を送りましょう!


1)コトバンクの解説 

補足の解説:

「真善美」は、普遍的ないつの時代も変わらない価値観であり、考え方のベースは人として生まれた上で知性・感性・意思のレベルを引き上げることが目指すべき方向であるということです。プラトンのイデア論が語源ともいわれますが、「真・善・美」という3つの概念が近世の哲学体系に区分されたのは、ドイツのカントという哲学者の影響によるものとされています。 

参考:「真善美」の意味とは? 語源や使い方、類義語などを解説 | RUN-WAY

[先人の教え] 用意周到・準備万端

No Comments

千里剣心会では、稽古の初めに「剣道の理念」および「千里剣心会の稽古の心構え」を唱和しています。これに合わせて、時間の許すときは講話を組み入れる取り組みを行っております。

7月の言葉は「用意周到・準備万端」です。

岡田先生が昔八段の先生から聞いて心に残っている言葉として紹介してくださいました。

■用意周到と準備万端の違いは?

「用意周到」と「準備万端」は似た意味を持つ表現ですが、微妙な違いがあります。

「用意周到」は、ある行事や活動に臨む際に、細かいところまでしっかりと計画して準備することを指します。全体の流れや細部まで考え抜くことで、トラブルを避けたり、スムーズな遂行を目指します。例えば、試合に出場するために、相手の弱点を分析し、戦術を立てることや、備えられるトラブルに対して対策を練ることが「用意周到」です。

一方、「準備万端」は、ある行事や活動に参加する前に、必要なものや手続きを全て整えて、万全の状態にしていることを指します。あらゆる準備を完了していて、何も欠けていない状態を表現します。例えば、旅行に行く際に、必要な書類を揃えたり、荷物をきちんと整理したりすることが「準備万端」です。

簡潔に言えば、「用意周到」は計画や戦略を立てる段階での徹底した準備を指し、「準備万端」は参加する前に全ての準備が整っている状態を指します。両者は一貫してよく準備しているという意味では似ていますが、微妙なニュアンスの違いがあります。

■用意周到について

用意周到とは、「細かいことまでしっかりと準備しておくこと」です。それは、何かをする前に、大切なことを見落とさないようにすることや、思いやりを持って計画を立てることを意味します。
例えば、友達と遊ぶ前に用意周到になると、次のようなことが考えられます:
1.時間を守る:約束の時間に遅れないように、家を出る時間や交通手段を考えておくこと。
2.持ち物を確認する:遊びに必要なものを忘れないように、リストを作って確認すること。
3.天気をチェックする:外で遊ぶなら天気予報を見て、傘や帽子が必要かどうかを知ること。
4.お金を持っていく:おやつや遊び道具を買うために、お小遣いを持参すること。
5.友達の気持ちに配慮する:友達がしたいことや行きたい場所を聞いて、みんなが楽しめる計画を立てること。
周到になることで、予期せぬトラブルを避けたり、スムーズに楽しい時間を過ごしたりすることができます。小学生の皆さんも、学校や遊びの中で、用意周到な心を持つことで、より楽しい経験をすることができるでしょう。

■準備万端について

準備万端とは、「すべての準備が整っていて、何も忘れていない状態」のことを意味します。これは、大切な行事や試合、イベントなどに参加する前に、必要なことをしっかりと準備しておくことを指します。例えば、遠足に行く場合には、次のようなことが準備万端であると言えます:

1.お弁当を作る:おいしいお弁当を作るために前日に食材を買っておき、朝になったら詰めること。
2.服装を選ぶ:天気予報を確認して、適切な服装を選んで準備すること。
3.リュックに必要なものを入れる:水筒やおやつ、帽子、タオルなど、必要なものをリュックに詰めておくこと。
4.予定を確認する:出発時間や帰宅時間など、予定をしっかりと把握しておくこと。
5.お金を持っていく:入場料や交通費が必要な場合には、お金を持っていくこと。

準備万端になることで、遠足や行事などがスムーズに進み、楽しい思い出をたくさん作ることができます。大切なことを忘れずに準備をしておくと、安心して楽しい時間を過ごすことができるので、小学生の皆さんもぜひ心掛けてみてくださいね。

「用意周到・準備万端」は、剣道が強くなるためだけでなく、人生を切り開いていく上でも必要不可欠な要素となります。以下に、これらのキーワードが剣道と人生にどのようにかかわるかについてまとめます。

剣道における「用意周到・準備万端」:

「用意周到・準備万端」は、剣道だけでなく人生全般においても大切な価値観

1.基礎の徹底:剣道は瞬発力や技術だけでなく、基礎的な姿勢や動作が重要です。日々の練習で基本を忠実に身につけることで、戦いの中でより確かな技を発揮できるようになります。
2.心の準備:剣道は肉体的な戦いだけでなく、精神的な戦いでもあります。試合や稽古に向けて、自分の心を整えることが重要です。自己の意識と向き合い、冷静で集中した心を持つことで、効果的な動きと判断が可能となります。
3.目標の設定:剣道は継続的な努力が必要です。目標を具体的に設定し、それに向かって計画を立てることで、モチベーションが維持され、一歩一歩成長していくことができます。
4.対戦相手の研究:試合においては相手をよく知ることが重要です。相手の特徴や弱点を把握し、戦術を練ることで、戦いの中で有利に立つことができます。
5.安全対策:剣道は危険な面もあります。けがや怪我を防ぐために、適切な防具の着用や身体のケアを怠らず、「用意周到・準備万端」な状態で稽古に臨むことが大切です。

人生を切り開いていく上での「用意周到・準備万端」:

1.目標設定と計画:人生においても目標を持ち、それを達成するための計画を立てることが重要です。遠大な夢や目標を持つことで、やる気と向上心が生まれます。
2.自己啓発:常に学び続ける姿勢が大切です。自己啓発を通じて、新たな知識やスキルを身につけ、自己成長を遂げることができます。
3.困難への対応:人生には様々な困難が待ち受けます。しかし、「用意周到・準備万端」な状態であれば、困難にも立ち向かう勇気とリーダーシップを発揮できます。
4.チームワークとコミュニケーション:人生においても、他者との協力やコミュニケーションが不可欠です。互いに支え合い、共に成長することで、より豊かな人生を築くことができます。
5.ポジティブなマインドセット:人生には不確定な要素がつきものです。しかし、「用意周到・準備万端」なマインドセットを持つことで、ポジティブな姿勢を保ち、困難を乗り越える力を身につけることができます。

「用意周到・準備万端」の精神は、剣道の道場から人生の中にも広がります。これらの価値観を大切にし、日々の努力を惜しまないことで、剣道だけでなく、人生全体が充実したものになることでしょう。

[先人の教え] うん・どん・こん

No Comments

千里剣心会では、稽古の初めに「剣道の理念」および「千里剣心会の稽古の心構え」を唱和しています。これに合わせて、時間の許すときは講話を組み入れる取り組みを行っております。

6月の言葉は「うんどんこん」です。川又先生が剣道が上達するために大切なこととして紹介してくださいました。

剣道上達の秘訣は、「うんどんこん」だと言われます。この言葉は、戦後、京都大学剣道部の師範を務めた西善延範士が、面手ぬぐい等に記していた人生訓であり、指導理念だそうです。成功に必要な3つの要素としても広く知られている言葉でもあります。

では、うんどんこんとは、どいう言う意味でしょうか?

うんは!運勢

どんは!鈍感

こんは!根気

運は、運がいいという事。根は根気があるという事。この二つが成功に必要な要因と言われると分かるようにも思いますが、鈍感がいい?って、何か不思議な気がしませんか?

以下、うんどんこんについて、解釈を考えてみたいと思います。

「運鈍根(うんどんこん)」 成功するには、運が強いこと、根気があること、ねばり強いことの三つが必要であるという教え。

漢字ペディアより)

運について

運が良いとか悪いとか言いますが、運とは仏教でいう縁の事です。剣道が上達するためには、良い師に巡り合うことが大切です。人との出会い、時代の到来、環境などいろいろな縁がありますが、どんなに頑張ってもこの縁がなければなかなか大成することは難しいかもしれません。そして追いかけてもだめ、追いかけなければやはりだめという厄介なものなのです。それが「縁(運)」というものです。

千里剣心会で剣道を始めた「縁(運)」を大切に、

仲間や先生方との縁を大切にしてほしいと思います。

また、今、稽古を出来ているという事は、とても大切なことです。今修行が出来る人は、その縁(運)を大事にしなければなりません。大事にするということは気を抜かないで今に集中することです。これにより、縁(運)が舞い込んでくるのです。運は準備をしている人のところにしか訪れません

今を大切にするということも、運をつかむうえで意識したいものです。

鈍について

鈍?と思われる方も多いと思います。

一般的に「鈍感」という言葉は、「気が利かない」「空気が読めない」といったネガティブなイメージで捉えられます。ではなぜ、成功要因に「鈍」が必要なのでしょうか?

私がこの言葉に出会ったのは、生徒指導において次のような悩みを口にした時のことでした。

とても頭が良くて理解力もセンスもあり、剣道に限らず何をやっても上手な生徒がいる。ところが、こういう生徒に限って、さあ、ココから成長するぞッという時に別の習い事が忙しいと言って稽古に来なくなってしまったり、小手先のテクニックに走ってしまったりする・・・

この悩みに対して、教えてもらった言葉がうんどんこんでした。教えてくださった剣道八段の先生の解釈は以下のようなものでした。『剣道が上達するには少し不器用なくらいの方がいい。上手くいかないから一生懸命考える。鈍いというと悪いイメージがあるかもしれないが、何でもできてしまうと考えないままでどこかで成長が止まってしまう。それよりも、鈍いくらいの方が上手くなろうと考えるからよいのだ』と。

なるほど、器用貧乏という言葉があるように、何でもすぐにできてしまうよりも、少し頑張れば出来るくらいの方が良いのかもしれません。そして、一生懸命に考えること。これ、すごく大切な成長要因であろうと思います。

ビジネスの世界に目を転じると、実業家の古川市兵衛氏は、運鈍根を以下のように表現しています。

『私はいつも「運・鈍・根」を唱え続けてきた。
運は鈍でなければつかめない。利口ぶってチョコマカすると
運は逃げてしまう。 鈍を守るには根がなければならぬ。』

古河市兵衛(実業家)

この言葉の解釈の中で、鈍は「利口ぶらないこと」というように解釈できます。禅の修行の中でも運鈍根という言葉は大切に扱われており、その教えの中で、鈍というのは自分をごまかさずに真正面から立ち向かうことだとされています。剣道でも師の教えを素直に聞き、自分をごまかさずに真正面から課題に向き合うことは大切な心構えでしょう。

また、ビジネス書などでは、「鈍感力」とはストレス要因を正面から受け止めるのではなく、上手に受け流すスキルのことだと説明しています。 スキルとしての鈍感力は、ストレス要因を「あえて気にしない」「意識して忘れる」ことでコントロールするものです。

一方、私に運鈍根を教えてくださった八段の先生は、別の機会に、次のようなことも言っておられました。「鈍」は大切だけれども、自分のことを「鈍くさい」などと思っては絶対にダメだ。自分は出来ると思わなければ、出来るものも出来ないのだから・・・。

また、「鈍」という言葉には別の解釈も含まれます。剣道の上達は一日にしてなりません。一気に成長するものではなく、鈍いくらい少しずつ成長していくものです。

このように見てくると、「鈍」という言葉、深いですね・・・

根について

物事を成功するためには、運(運を掴むこと)鈍(鈍いと思われるくらいの粘り強さ)と根(根気よく続ける)この三つが必要である。「根」とは根気の事である。哲学者の和辻哲郎氏は次のような言葉を残しています。

成長を欲するものは、まず根を確かにおろさなくてはならぬ

和辻哲郎(哲学者)

なるほど、成功するために必要な要素としての「根」がイメージできる言葉です。

何をやっても思うようにならない時、上にのびられない時に根は育つんだから

相田みつを

あいだみつおさんの言葉も同じようなことを言っています。剣道を続けている生徒の中にはなかなか自分が上手にならず、自分には才能がないのではないか?と悩んでしまう子供もいます。しかし、成長というのは、一気に訪れるものではありません。根気よく稽古を続けることで少しずつ成長していくものなのです。

ビジネスに目を転じると、ひと時流行ったGRITという言葉が想起されます。成功した人たちには共通して「やり抜く力(GRIT)」があるというものです。「根性論は強制」「GRITは自発的」という点が最大の違いです。

剣道の稽古は単純単調です。小学生の初心者から八段の高段者まで、行う稽古はほぼ同じです。同じ稽古をひたすら繰り返すわけですが、その稽古に求める質は当然、初心者と高段者では異なってきます。しかし、いずれにしても、タイミングをみて 細かいことは気にせずに 自分の求める課題を解決するために、ひたすらやり続けることが大切です。

運鈍根 まとめ

「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である」これは剣道の理念に掲げられた言葉です。「運鈍根」とは、まさに満足な人生を送るための人間形成に必要な三要素なのかもしれません。

①運は徳のある人のところにやってくる。徳を積め → 幸運に恵まれる

②流行に流されるな。不易の部分を持て → 才走らずこつこつ努めること

③根気よく続けよ。続けられるものを選べ → 根気よいこと

https://www.amazon.co.jp/%E9%81%8B%E9%88%8D%E6%A0%B9%E2%80%95%E3%82%8F%E3%81%8C%E5%B8%AB%E3%81%AB%E5%AD%A6%E3%81%B6-%E4%B8%8A%E7%94%B0%E8%8C%82%E7%94%B7/dp/4892053678

[講話] 世界で一番貧しい大統領の言葉から

No Comments

2016年4月17日の稽古では、「世界で一番貧しい大統領」として有名な南米ウルグアイの前大統領、ホセ・ムカヒさん(80)が先ごろ初来日を果たしたニュースをもとに、子供たちに訓示しました。

ムカヒ氏の映像はこちら


ムカヒ氏が有名になったきっかけは、2012年に開かれた「国連持続可能な開発会議」でのスピーチでした。 <貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に欲しがりいくらあっても満足しないこと> 彼は、給料の大半を寄付して農場にクラス清貧ぶりもあって世界に知られるようになりました。
彼の数ある多くの言葉の中で、次のような言葉を子供たちに紹介しました。

「人生で最も重要なことは勝つことではありません。歩き続けることです。それはつまり、転んでも毎回起き上がること、新たに何かを始める勇気を持つということです」

剣道の稽古に限りませんが、最初は楽しいと思って始めたことでも、続けていくうちにどこかで壁に突き当たり、成長を感じられずに悩むことがあるかもしれません。
これまでにも繰り返し、子供たちには継続の大切さを伝えてきていますが、ここで改めて「一つことを続ける大切さ」を伝えたいと思いました。
また、次のようなムカヒ氏の言葉も紹介しました。

「他人に勝つために戦うのは止めてください。そうではなくて、自分自身の心の中にあるものと戦うのです」
「あなたが生きている限り、他者との衝突は避けられません。大事なのはコンフリクト(衝突)を起こさないことではなく、どうすればコンフリクトを解決していくかということです」

生徒の中に「なぜ、他人を竹刀で叩かないといけないんだろう?竹刀で相手を打つと悲しくなってしまう」と悩んでいる子供がいました。「剣道は他人をただ打ち負かすためにやっているのではないよ」と伝えますが、小さな少年に「自分自信との戦いだ」と言ったところで、なかなか理解できるものではありません。


剣道を始めた子供たちが一番最初に躓くのが防具を付け始めた頃ではないでしょうか。初めて防具を付けると、動きにくいし、打たれると痛いし、今まで楽しかった剣道が一気に嫌なものに変わってしまうのも、防具を付け始めたばかりの時期が多いかもしれません。


今、千里剣心会のメンバーは、やっと対面稽古を始めようとしたばかりの状態です。今年は無級の生徒たちも昇級審査を受け、初めての試合にも挑戦しようとしています。
「試合に出たいかい?」と聞くと、尻込みする気持ちも良く分かります。だって、経験がないから少し怖い気もするのでしょう。そんな生徒たちが、自分自身の弱い気持ちを乗り越えて、果敢に初めてのことにチャレンジしよう!
そう思ってもらいたいと願っています。
 

[動画] 英語による剣道の稽古説明

No Comments

短期留学でアメリカから来る少女に体験稽古を提供することになりました。全日本剣道連盟による剣道の解説ビデオ(英語バージョン)も参考になりますが、ここでは、もう少しビギナー向けの解説動画を準備してみました。
Kendo-Guide.Comでは、剣道について英語でいろいろ解説が書かれており、メンバー用にNewsletterも発行しているようです。
http://www.kendo-guide.com

[動画] 打突の仕組み

No Comments

剣道選手の打突の動きは、高速カメラでも捕らえるのがやっとというほどすばやいです。Skijournal社が剣道選手の打突字の足の動きをわかりやすい動画にしていますので紹介します。ビデオの中で、高段者の打突では攻め崩しの後に近い間合いから打つので足を高く上げないというコメントが出てきます。

動画は閲覧できなくなりました

高段者の究極の面一本として、作道先生の面一本を続けて紹介いたします。ビデオのストップボタンを押して打突の瞬間を捉えるのさえ、難しいほど打ち出しから打突終了までは一瞬です。
剣道選手打突の仕組み SKijournal

2022.09.追記。1分46秒時の作道先生の面打突は、縁を切ったところで相手の一瞬の居つきをまっすぐに打突しています。この一瞬までの攻め合いと、静から動への切り替え等、見ごたえのある攻防です。

[動画] 模範稽古_常総剣道大会の様子

No Comments

常総剣道大会の模範稽古の様子がYouTubeにアップされていました。日ごろの稽古の参考になりますので、ご覧ください。
注目していただきたいのは、最初の切り返しの稽古です。
 ・しっかりと振りかぶり、
 ・しっかりと前後に移動しながら元の場所まで戻り、
 ・正面うちの際に縁を切らず一息で打ち切っている点
常に意識すべきことです。

Older Entries